きっちゃん、コツコツボーンキング、僕の三人はヤニおじの手ほどきもあって基礎知識はバッチリ。ヤニおじさんチームの5人のおかげで、和気あいあいで楽しい時間を閉店まで過ごせた。
・すごい純粋に見える人を恐れるべき
何かと懇意にしてくれた。
銃のリロードの仕方、同じメーカーのマガジンなら互換性があって仲間内で貸し渡せる事、チーム同士での動き方などなど。
僕は教えてくれた事よりも、僕より一回り上の世代が楽しそうに遊んでいる表情がよかった。楽しむことに年齢なんて関係ないんだとわかったからだ。
それから連絡先を交換し、後日京都の方にあるサバゲーフィールドに行く流れになった。
そこでヤニおじさんチームの名前が判明する。
フィアーザウォーリアーとかなんとかっていう名前だ。名前強強な感じだが、メンバーのラインナップで考えるとかっこよさだけが浮き彫りで、僕らはその一つになるのだと考えると楽しみで仕方がなかった。
・楽しさの押しつけが「推し活」であってはならない
後日フィアーザウォーリアーの車に相乗りさせてもらった。京都に到着すると、僕らは事前に買ってきた装備を机に広げた。
コツコツボーンキングは貰い物や安売りを集めて装備していたが、激痩せ型なために貧困ベトナム兵にアップグレード。
きっちゃんは黒多めな装備に整っており、なんだか特殊工作員みたいな感じに仕上がっていた。
そんな中で僕は半袖ジーパンとユニクロ装備でラフさを追求、新しく買ったコルトガバメントと皮のベルトを付けて腰回りには専用ホルスターを装備していた。
メタルギアシリーズのビッグボスが持っていた武器。僕はメタルギアソリッド3から入っていたので、買うならこれだな(使命感)と最初から決まっていた。
机に置いて写真を撮ったり撮ってもらったり、これから始まるゲームの相棒をスタートするまで可愛がっていた。
すると、急に背後からタバコの匂いが流れてくる。
「あ、それね。みんなグロッグ持ってるからマガジン使い回せないんだよ。僕の貸してあげるから使ってね。」
意表を突く言葉が頭に刺さった。流石にこれはどうなんだと思って「いや。僕はこれが使いたいんですけど…」と反抗したが全部無視されグロッグを手渡された。
いやかっこいいけど、違うんだよ…
そんな言葉は届かないのはわかっていたので、なくなくグロッグのグリップを握った。
ちなみにいうが僕が買ったコルトガバメントは、グロッグとの互換性がないマガジンになる。しかもメーカーも違うので使い回しは基本的にはできない。
だがフィアーザウォーリアー(笑)の皆さんはグロッグで装備を統一していた。そんなもん押し付けて来んなよと言えばよかったな…
・全部氷山の一角。
一応言っておくが、こんなプレイヤーは稀だ。それだけはわかっていてほしいし、基本的には優しい紳士のスポーツであることを念頭においてほしい。
「あ、そこに敵が隠れてるからサッと行ってよ。僕にげるから」
「たまなくなっちゃったからマガジン貸してよ。」
「えっ!君が持ってきた銃装備してきたの?マガジン使えないからいらないのに。自己中心的だなぁ…まぁいいけど。」
先日の印象がまるで嘘のようで、正直キレる一歩手前だった。
俺はチームのメンバーでもなければ部下ではない、そんな怒りを出してしまうと周りに伝播するので隠していたが、ゲームが終了するまでサバゲを楽しめなかった事を覚えてる。
良いところは単なる印象で、性格の先っちょで、その延長線にはちゃんと嫌な所がある氷山の一角だったのだ。いい勉強になったよ本当に。
・悲しい帰り道
最寄り駅におろしてもらい、僕ら三人は電車で帰ることになった。
駅のロータリーで僕はみんなと笑顔で話しながら次はないかな…なんて考えている。
そんな僕の気持ちを察したのか、ヤニおじがトドメをさした。
「じゃあ毎週水曜日と土曜日がサバゲー定例会だからあけといてね。」
一瞬何を言っているのかわからなかった。わかった途端、僕はムチャクチャにイラついてしまった。
サバゲー定例会とは、一週間のうちのどこかに日時を決めて毎週開催するサバゲーのことだ。サバゲーフィールドは基本的に営業時間が9時〜17時まで。そこを踏まえてヤニおじ語録を翻訳するとこうだ。
「毎週平日のど真ん中、有給取ってサバゲーに参加しろし」
こんな事を言われて平然とできるやつの気がしれない。僕はもう無理だな…ということでお断りした。
どうやらヤニおじさんはフリーターだったようだ。本人曰く「遊びに本気になれ若者よ、今しかないのだから。」だそうだ。本気になりすぎて色んな物を忘れている人の言葉の重みは違うな。
・終わったので始めた。
帰りの電車でため息をつきながら今日のことをまとめてみた。
こんな楽しい遊びを台無しな気持ちにしてしまうのは、期待が高すぎたこと、人間性とグループ全体の価値観が違いすぎること。
形にハメて整えようと切り取るからバリが出る。製造業に入っていた僕はある種の考え方があった。適材適所だ。僕はこの件を踏まえて同じ穴のムジナを集めようと思ったのだ。
揺れる車内できっちゃんに言ったのは単なる一言。
「きっちゃん、チーム作ろっか。」
僕がいた小学校に転校してきた明るい性格の陰キャヲタク。フランクで頭が良くて、僕にはもったいない親友。だから返事もわかっていたから言ってみた。
「いいのぜ。」
色んな意味でラクな友達で助かる。
それから僕ら幼馴染3人は、サバゲーチームを作った。
色んな事を試しながら、トラブルも乗り越えて僕らのチームは活動こそ衰退しているが、8年間続いている。
因みに名前は焼肉屋さんで決めた。店員がオーダー繰り返したときに最初にでた名前にしようということで、さくらゆっけ3人前となった。
そこでのトラブルはまたいずれ。